ヤミの自動車教習所開設 | ザッツ!談

ヤミの自動車教習所開設

ヤミの自動車教習所開設→中国人5人逮捕
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20060209i306.htm?from=main3



気がつくと後ろに教官が立っていた。ここは一体どこだろう。


2時間前、指示された某市の駅前に立っていると、黒塗りのワンボックス車がやってきた。全ての窓は真っ黒のスモークガラスで車内の様子は外からは見えない。夜の9時だというのに運転席にもスモークが貼られていて運転できるのだろうかと不思議に思った。車内に入って驚いた。運転席に座っている男は全身黒い服を着ていて、目は黒い布でふさがれているのだ。「運転できるのか。」私が尋ねると、黙ってうなずいた。他には誰も乗っていない。私が席に座ると車は静かに走り出した。高速道路に入ったところまでは覚えているがそのあと眠ってしまった。


着いた場所はどこか雑木林に囲まれた広い空き地だった。虫の鳴く音なのか、遠くの工場の音なのかモーター音に似た音が聞こえる。車が立ち去った後、ぼんやりしていると後ろから声がした。「ヤミの教習所へようこそ。」ささやくような小さな声で暗い闇の中から声が聞こえた。「まだ見えないのか。」「ええ」「これを貸してあげよう」手の中に押し込まれたのはロシア製のナイトスコープつまり赤外線双眼鏡だ。暗闇の中を見回すと、少し先のほうで何台もの濃い色の自動車が動いている。「ここの教習車は全て電気自動車だ。音はほとんどしない。」


驚く自分の手からナイトスコープを取り上げ「こっちだ。」という教官。声のするほうについていくがまだ周囲の様子はよく見えなかった。ドンと固いものにぶつかった。「気をつけろ。それが君の教習車だ。」たしかに車だ。色はたぶん濃い黒色だろう。ドアミラーに触れたドアはこのあたりだ。ドアを確認して中に乗り込んだ。ドアを開けても車内灯はつかなかった。「キーはささっている。教習を始める。」ハンドルの下に手を入れてキーをひねったエンジンはかかったが、灯りはどこにも点かない。ヘッドライトをつけて見ようと右手でさぐったが、ない。操作バー自体がないのだ。


「ここはヤミの自動車学校だ。何を期待していたんだ。」教官が厳しく言った。相変わらず前を見てもなにも見えない。隣りに座っている教官の顔さえ見えない。深い闇。そして私は暗闇に向かってアクセルを踏みこんだ。